読了

中田亨『「事務ミス」をナメるな!』光文社新書

ヒューマンエラーの解決はどうしても「よく注意する」というだけで終わってしまう所、この本はそこから一歩踏み込んだ仕掛けの工夫が紹介されて、参考になる。プロセスを見直す時のチェックリストとして使うのが一番有効かと思われる。

桜庭一樹『GOSICKs III ゴシックエス・秋の花の思い出 (角川文庫)』角川文庫

短編集。歴史物安楽椅子探偵の趣向がいい。このシリーズ、魔法とかのファンタジーの世界に行くかと見せて、科学的な解決でリアルに引き戻し、しかしファンタジーとおぼしき事象を伏線で残すという感じで、「いったいここは非科学がアリなファンタジー世界な…

伊東乾『指揮者の仕事術』光文社新書

観衆に最高の音楽を届けるために指揮者が使うありとあらゆる手段を紹介している一冊。この「ありとあらゆる手段」を、科学の眼からも切り取っている所が非常に興味深い。「のだめカンタービレ」でも指揮者の大変さがいろいろ書かれているけど、実際はさらに…

八幡紕芦史『仮説力を鍛える』ソフトバンク新書

こういう本は、最初に読むとえらく当たり前で常識的なことしか書いていないように思えるのだが、いざ難題にぶち当たった時に読み返すと、自分の思考や進め方のどこがまずいのか、結構クリアにさせてくれるものなのだと思う。 その意味では、前半の「いかに問…

北森鴻『ちあき電脳探偵社』PHP文芸文庫

基本的にはジュブナイルなので、トリックとか題材もそれなりだし、現実離れした設定なんてのもある。だが、ひとつひとつの小道具の使い方がうまいなあ、と思わせるし、簡単とはいえ推理がちゃんとロジカルなのが心地いい。うまい。 気になったのが設定。主人…

内田和成『論点思考』東洋経済新報社

問題に対して網羅的にしらみつぶしに分析するのではなく、先に答えを想定する=仮説を立てて分析を進めるという「仮説思考」は、コンサルならずとも定番の思考術だろう。ただ、実は「仮説通りに分析して、真逆の結果が出たとしても、仮説の修正によってそれ…

原武史『「鉄学」概論 車窓から眺める日本近現代史』新潮文庫

ひとつひとつは面白いトピックなのだが、掘り下げがちょっと足りない印象。でも、「鉄道の社会史」は、単なる鉄道マニアの余技ではなく、文学なり社会学なり歴史学なり経済学からちゃんとした議論をしてもいいと思うのだけど。

日本推理作家協会(編著)『ミステリーの書き方』幻冬舎

ボリュームはあるがなかなか面白い本だった。書き方のハウツーというよりは、「あ、こういうことを考えて、作家さんはミステリを書いているんだね」という、楽屋裏をのぞく面白さがあった。雑誌連載&企画開始当初から間があるせいか、アンケートに答えてい…

万城目学『鴨川ホルモー』角川文庫

最近森見登美彦氏にハマっているので、京都つながりで何か気になっていて読んだ。うーん、『鹿男あをによし』に進むべきか。

あさのますみ『ウルは空色魔女(3) 贈りものは魔法パフェ!』角川つばさ文庫

なんでこんな子ども向けの本を読んでいるかといえば、わたしがアニスパリスナーだから(分かる人だけ分かってください)。ラジオの浅野さん(いわゆる「黒浅野」)を知っているとまた違う意味で面白い。いや、そういう色眼鏡抜きでも、いいお話だと思うので…

結城浩『数学ガール (数学ガールシリーズ 1)』ソフトバンククリエイティブ

あらすじや登場人物を見て、「マンガで学ぶ○○」「萌える○○」のたぐいを想像する方も多いだろうが、本格派の数学読み物にして格好の数学入門書という作品。 この本のポイントは3つ。 (1)数式の展開や証明のプロセスを丹念に追っていて、初学者でも一緒に…

早川書房編集部編『ミステリの名書き出し100選』早川書房

本を紹介する場合、あらすじの説明よりも出だし数行を見せる方がより興味が湧く、という場合がある。あらすじ紹介をメインにした一般のガイドよりも、この本の方が私の読書欲をかき立ててくれた。 ジャック・フィニイの「愛の手紙」やP・D・ジェイムズ『女…

芦原すなお『わが身世にふる、じじわかし』創元推理文庫

刊行されたことを知らない人が多かったように思う。《ミミズクとオリーブ》シリーズ第3弾は、書く人が書けば陰惨で重い話にもなるような事件が続くものの、「ぼく」と「妻」と河田の掛け合いのおかげでむしろほのぼのさせられる。読んでいるだけでなんか和…

米村圭伍『おんみつ蜜姫』新潮文庫

正調娯楽時代小説を書き続けている米村圭伍。娯楽に徹しつつ、今の読者にも楽しめるよう現代感覚を取り込んだこのスタイル、時代小説への間口を広げるのにうってつけの作品としてもっと評価されてもいいと思うんだけれどなあ。ラノベ好きな方、試しに一冊読…

ミステリー文学資料館(編)『犯人は秘かに笑う ユーモアミステリー傑作選』光文社文庫

ベスト3作は阿刀田高『お望み通りの死体』、清水義範『茶色い部屋の謎』、米澤穂信『Do you love me?』。「オチでニヤリ」というより「文体に漂うユーモア」という基準で選んだと思われるが、「この作家ならもうちょっとユーモア風味の強い作品が他にあった…

もとなおこ『Dearホームズ(2)』秋田書店ボニータCOMICS

ホームズの「大空白時代」に新たなる展開を付け足した「ドールサイズ・ホームズ」の続巻にして完結巻。決してキワモノ路線に落とさなかったところは好感が持てるが、逆にこの設定を使った理由が曖昧になってしまったとも言えそう。せっかくの設定なのだから…

天野瑰他(共著)『シャーロック・ホームズの新たな冒険--バスカヴィル家の犬』あおば出版

BL系の漫画家が正典の漫画化を進めているこのシリーズも早くも3冊目。BL的においしい所はきっちり拾っているのだが(笑)、原作もちゃんと読み込んでいて好感が持てる。という間に2月にまた続刊が出るようで、この分だと正典60作をすべて漫画化してしまいそ…

酒井順子『女子と鉄道』光文社

女性で鉄道好きを表明している方となると、私の知る範囲ではこの方と、北海道をフィールドにしているフォトライターの矢野直美さんぐらい。数少ない「女性の鉄道好き」の視点から書かれた鉄道エッセイには共感する所多し。それは私もまだまだ鉄ヲタとしては…

飯田泰之『ダメな議論--論理思考で見抜く』ちくま新書

「議論のウソを見抜く技術」と一口に言っても、場面や媒体によって微妙に「技術を使う勘所」が異なってくる。本書は主に「文字(活字)ベースのまとまった分量の社会評論」に対して、その弱点を見つけるための視点を紹介している。マスメディアやブログの評…

J・テイ『時の娘』ハヤカワ文庫

うーん、歴史推理の妙は楽しめるものの、やはり大昔のおぼろげな高校世界史レベルの知識では、この面白さを存分に味わえなかったのが残念。しかし、やっぱりイギリスミステリだなあ、いいなあ、としみじみ思ったのも事実。とかく歴史用語がずらずらと並んで…

宮脇灯子『父・宮脇俊三への旅』グラフ社

鉄道紀行作家・故宮脇俊三の娘さんが書いた父親の回想録。飄々であり恬淡とした文章を綴った宮脇さんも、最晩年は筆力の低下から酒に溺れる毎日だったという話に触れ、改めて「老いと向き合う」ということの意味を考える。まず来る「両親の老い」に対し、一…

広瀬正『エロス』集英社文庫

昭和初期の世相を非常に丹念に追いながら描かれる「ふたつの過去」。この展開をそう落とすかっ!という驚きもさることながら、むしろこちらが主題とも言ってよいほどみっちり書き込まれた世相史をぜひ味わいたいところ。

安井俊夫『犯行現場の作り方』メディアファクトリー

ミステリに出てくる有名な館を、建築士の視点から実際に図面を引いて見るというのが面白い。かつ、「違法建築」とバッサリ斬ってしまうのではなく、「もし実際に建てるなら」という発想の元で、できるだけ現実の建築に近づけようというスタンスが好感。ああ…

『ピタゴラ装置DVDブック1』小学館

読了、というのとはちょっと違うか。ともかくようやく入手できたので早速見る。 映像は19分しか入っていないけれども、全部で33のピタゴラ装置が入っていて超お得。本が付いたとしても3000円弱というのはちょっと高いように思うかもしれないがそんなことはな…

ショートコメント一気出し

オーケストラは素敵だ―オーボエ吹きの修行帖 (中公文庫 (も27-1))作者: 茂木大輔出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/09メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (16件) を見るはみだしオケマン挑戦記―オーボエ吹きの苛酷なる夢 (中公文庫)…

津原泰水『ブラバン』バジリコ(ISBN:4862380271)

この三連休、初日は久しぶりに高校時代の吹奏楽部同期や後輩たちと会って飲んでいた。その場に来れなかった同期の一人からは、つい最近結婚式の案内が届いたばかりだった。 中日は久しぶりに楽器を手に取り、大学時代のサークルのOB・OGライブに乗り、自分の…

高木彬光『白昼の死角』角川文庫

手形詐欺を題材に完全犯罪を取り扱った作品。昔から薦められていたのだが、現在でも十分「厚い!」と思わせるだけのボリュームに、経済事件という取っ付きの悪さが重なって、長らく手が出なかった。せっかくの機会だから、と手に取ってみた。 これが面白い。…

 すっかりはまってしまいました

のだめカンタービレ(13) (KC KISS)作者: 二ノ宮知子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/09/13メディア: コミック購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ (638件) を見る↑最新13巻まで買って一気読み。 これはいい!クラシックをやっていない人間に…

高橋和『女流棋士』講談社文庫(ISBN:4062750880)

私の雑多な趣味の中の1つに将棋がある。そのため将棋にまつわるエッセイなどもたまに手に取る。女流将棋界の中心的な棋士である彼女が書いたこのエッセイは前々から気になっていて、文庫化を機に読んだ。大崎善生*1と結婚していたのは知っていたが、今年初…

 山田風太郎『明治十手架(上・下)』ちくま文庫(ISBN:448003353X)(ISBN:4480033548)

久しぶりに手に取ったヤマフウ明治物。登場人物がすべて善人ではなく、どうしようもない悪党どもも多いのだが、どの人物も強く印象に残るのはなぜだろう。単なる「脇役」「エキストラ」でしかない人物は一人もいない。忍法帖にしろミステリにしろ、沢山の登…