2001-01-01から1年間の記事一覧

 2001年読了ミステリ私的ベスト

今年読んだミステリの中から例によってベスト10を選んでみることにする。 去年(2000年)はオールタイム・ベスト級の名作をガシガシ読みあさっていたが、今年は読んだ本の数が(特に後半に)少なくなったこともあって、去年に比べると「地味」なランクである…

 菅浩江『アイ・アム I am.』祥伝社文庫

目覚めたとき、「私」は病院の一室にいた。丸い胴体、人間の腕「のような」アーム、そしてホログラムの顔。「私」はロボットであった。「ミキ」と名付けられた「私」は介護ロボットとして、死と向かい合わせの人々が集まる病院内で働き始めた。ロボットとし…

 喜国雅彦『本棚探偵の冒険』双葉社

『日本一の男の魂』などで知られるギャグマンガ家の喜国雅彦は、ここ最近は「探偵小説マニアの漫画家」という肩書きの方が有名になっている。その片鱗は『メフィスト』に連載中の「ミステリに至る病」でも存分に発揮されているが、こちらは『小説推理』に連…

 泡坂妻夫『煙の殺意』創元推理文庫

今回復刊がなされた泡坂妻夫のノンシリーズ短編集。ベストは、どちらも「なぜ?」というホワイダニットの謎解きが鮮やかな「紳士の園」「煙の殺意」の二つと、ヨギ ガンジーものをほうふつとさせる「狐の面」の合計3作。 収録されている短編は統一性がなく…

 室積光『都立水商!』小学館

文部官僚の酒の席の会話から生まれた「都立水商業高等学校*1」。「♪ネオン輝く歌舞伎町〜」と始まる校歌(中山大五郎作曲)の通り、歌舞伎町のど真ん中に建てられたこの高校は、女子に「ホステス科」「ソープ科」「ヘルス科」(のちに「SMクラブ科」と「イメ…

 矢崎存美『クリスマスのぶたぶた』徳間書店

ぶたぶたシリーズ第4弾。今度はクリスマスにサンタの姿のぶたぶたが街を歩く。 さすがに4作目ともなると「いつものパターン」という感じにもなってくるのだが、それでも読んでいるうちにいつの間にかほんわかとした気分になってしまうのが不思議だ。 その…

 大阪圭吉『とむらい機関車』『銀座幽霊』創元推理文庫

戦前の数少ない本格短編作家であり、終戦を前に戦病死した幻の作家、大阪圭吉の推理短編集二冊。それぞれにベスト3を選ぶと、『とむらい機関車』からは、謎とストーリーが見事に融合した白眉である表題作「とむらい機関車」、動機の設定が素晴らしい「気狂…

 連城三紀彦『夜よ鼠たちのために』新潮文庫

表題作を含め、6つの短編を収録した短編集。ベストは、ありきたりの誘拐事件と思わせておいて思わぬ構図を浮かび上がらせる「過去からの声」、尾行の「依頼し合い」という奇妙な状況で読ませる「奇妙な依頼」、そして四角関係という設定をうまく生かした「…

 加納朋子『月曜日の水玉模様』集英社文庫

丸の内の会社に勤めるOL・片桐陶子の一日は、小田急線のラッシュとともに始まる。ぎゅうぎゅう詰めの乗客、ノロノロ運転の電車、どさくさ紛れの痴漢。そして、いつも同じ席で眠り込んでいて、しかも途中駅で降りてくれる若いサラリーマン。そんな毎日がち…