津原泰水『ブラバン』バジリコ(ISBN:4862380271)

この三連休、初日は久しぶりに高校時代の吹奏楽部同期や後輩たちと会って飲んでいた。その場に来れなかった同期の一人からは、つい最近結婚式の案内が届いたばかりだった。
中日は久しぶりに楽器を手に取り、大学時代のサークルのOB・OGライブに乗り、自分のヘタクソさ加減にげんなりしつつも、「ああ、合奏って楽しいよなあ」と思っていた。
そして、三連休初日に飲み屋に向かう電車の中で読み始めたこの本を、今日読み終わった。


本を買っていたのはもう少し前だったのだが、こんなシチュエーションがなければ忙しさに紛れて積ん読の山に潜っていたかもしれない。そして、このタイミングで読めたことを感謝している。
作中の登場人物たちほどではないが、私も高校を卒業してからそれなりの年月が経っている。幸いにもブラバン同期の中で既にこの世からいなくなった者はいないが、数ヶ月おきに順番に結婚式の知らせが飛び込んでくる。ちょくちょく会っているので、あまり「高校時代から変わった」という感じはないが、かつて制服を着て夕方の部室で練習をしていた仲間が1児の母かと思うと不思議な感慨に襲われる。
高校時代というものは、人生の中で「濃い」人間付き合いのできた数少ない時代であったということ。その時間を共有した友というのは、どれだけ年月が経っても忘れ難い存在であること。しかしそうであるからこそ、大人になってから再会した時に、いやおうなしに時の流れを痛感させること。
ある年齢以上の大人なら多かれ少なかれ誰でも感じていることを、この本は思い出させてくれる。吹奏楽経験の有無を問わず、「高校時代」を経験したすべての人に捧げる一冊。