2000-12-01から1ヶ月間の記事一覧

 はやみねかおる『ギヤマン壺の謎』『徳利長屋の怪』講談社青い鳥文庫

続いて、シリーズ番外編・大江戸編の紹介。今回は「夢水清志郎左右衛門」として、幕末の江戸に登場する。亜衣・真衣・美衣は回船問屋の娘、レーチは岡っ引見習い、真里さんはかわら版屋としてそれぞれ登場する。 舞台が花のお江戸に移っても、怪盗やら移動す…

 はやみねかおる『機巧館のかぞえ唄』講談社青い鳥文庫

そして第6作。老推理作家・平井龍太郎の住む洋館・機巧館。そこで開かれたパーティーに三姉妹は出ることになるのだが、パーティーの最中にホストである龍太郎が姿を消してしまう…。 個人的には、主な読者が小学生ぐらいの子供である本でメタミステリを書いて…

 はやみねかおる『踊る夜光怪人』講談社青い鳥文庫

続いて第5作。近所の桜林公園に、全身が光り輝き頭が取れるという「夜光怪人」が出没するという噂が広まる。三姉妹はさっそく公園に張り込み、光る「夜光怪人」をその目で確かめた。その頃、亜衣とレーチは、後輩の水野千秋から、お寺の住職をしている彼女の…

 はやみねかおる『亡霊(ゴースト)は夜歩く』講談社青い鳥文庫

連続はやみねかおるレビューはまず第2作から。亜衣・真衣・美衣の姉妹が通う虹北学園は間もなく文化祭。学校全体が慌ただしい雰囲気になる中、学校に伝わる四つの伝説をなぞるかのような事件が次々と起こる。 大ネタ小ネタ、いろいろなトリックが盛りだくさ…

 西原理恵子『まあじゃんほうろうき』(上・下)竹書房文庫

サイバラりえぞお大先生の出世作。 ある売れないイラストレーターがひょんなことからマージャンの世界に引きずり込まれ、家が建つほどのお金を吸い上げられながら、自分がカモにできるマージャン相手を見つけるなどして、いまだに卓を囲んでいるという怒濤の…

 小泉喜美子『時の過ぎゆくままに』講談社文庫

最後は、絶筆「友を選ばば」を含む、1986年刊の遺作短編集。 『男は夢の中で死ね』(光文社文庫)とは刊行年が一年しか違わないのだが、『男は〜』が1970年代後半の作品が中心なのに対し、この本は急逝直前の1980年代の作品が中心である。 実は、この1冊だ…

 小泉喜美子『男は夢の中で死ね』光文社文庫

今度は1985年刊行の「都会ミステリー」と銘打たれた短編集。基本はやはりハードボイルドタッチの都会派小説だが、ときおりSFっぽい作品が顔を出したりとバラエティに富んでいる。この文庫の解説はまだ肩書きが「ミステリー評論家」の山口雅也である。しかし…

 小泉喜美子『女は帯も謎もとく』トクマノベルス

続いて1982年刊のこの作品。ミステリマニアの新橋芸者・まり勇が、持ち前の好奇心からさまざまな事件に首を突っ込む連作短編集。 魚河岸・築地本願寺・歌舞伎座・新橋演舞場といった、作者のホームグラウンドである築地の風物、芸者の世界、そして歌舞伎や日…

 小泉喜美子『暗いクラブで逢おう』徳間文庫

今回は小泉喜美子短編集一斉レビュー。年代順に行く。 まずは1976年刊の第1短編集であるこの本から。全編ハードボイルドタッチの味わい深い作品である。最初の2編「日曜日は天国」「暗いクラブで逢おう」で男性を主人公としたハードボイルド風の作品を書い…

 加納朋子『螺旋階段のアリス』文藝春秋

サラリーマンから一転、私立探偵事務所を開いた仁木順平。開業三日目にしてその事務所を初めて訪れたのは、市村安梨沙という少女であった。彼女はなぜか押しかけ助手として仁木の事務所に「勤務」するようになり、ぽつぽつと持ち込まれる依頼を二人で解決し…

 西澤保彦『なつこ、孤島に囚われ』祥伝社文庫

官能百合小説作家・森奈津子は、見知らぬ女に一服盛られて意識を失い、目覚めてみると無人島にたった一人で取り残されていた。しかし海はきれいだし冷蔵庫のカニは食べ放題、監禁されたはずなのに実に快適な生活。そんな孤島生活をエンジョイしていた奈津子…

 紀田順一郎『古本街の殺人』『古本収集十番勝負』創元推理文庫

愛書家グループ「黎明の会」の面々は、メンバーで古書店主の清水の店で古本談義に興じていたが、その隣の部屋で、古書店主で清水の店の入るビルの大家でもある小場瀬が死んでいた。折しも地上げの問題なども絡んでおり、「黎明の会」のメンバーにも嫌疑がか…

 小泉喜美子『血の季節』文春文庫

精神鑑定の再鑑定を受けることとなった、幼女殺害事件の死刑囚。彼が鑑定医の前で語りだしたのは、戦前東京にあったとある洋館と、そこに住む青い目の兄妹の話であった…。 オルツィの『紅はこべ』をもからませつつ、戦前そして現代の日本に吸血鬼伝説を展開…

 芦原すなお『ミミズクとオリーブ』創元推理文庫

作家の「ぼく」は八王子からバスで20分ほど山の方に入ったところに住んでいる。原稿の締め切りにいつも追いまくられている「ぼく」の妻には、特技が二つある。一つは手料理、もう一つは推理。「ぼく」の同級生で刑事をしている河田が持ち込んでくる事件の数…

 稲見一良『ダック・コール』ハヤカワ文庫

「鳥」を共通のモチーフにしながら、自然と人間との交流を描く短編集。大きなテーマは共通しているのだが、収録されている六つの短編は、舞台も登場人物もスタイルもそれぞれ異なっている。ベストを挙げるならば、「密猟志願」「波の枕」「デコイとブンタ」…

 柄刀一『アリア系銀河鉄道』講談社ノベルス

異空間に飛ばされて不可解な事件を解決させられるという奇妙な経験を繰り返している宇佐見博士。彼が経験した「事件」をまとめた短編集。ベストは、表題作「アリア系銀河鉄道」と「アリスのドア」、もう一作挙げるとすれば「ノアの隣」になるだろうか。 幻想…

 広瀬正『鏡の国のアリス』集英社文庫

ある美容整形外科医の元に、性転換手術の相談にやって来た青年。青年は医師に自らの奇妙な体験談を語る。彼は銭湯につかっていると、男湯に入っていたはずなのになぜか女湯に入っていたのだと言う。女湯から叩き出された彼が見たのは、あらゆるものが左右あ…

 広瀬正『マイナス・ゼロ』集英社文庫

1963年、浜田俊夫は及川という人の家の離れの研究室にいた。18年前、かつてこの家の住人であった伊沢博士は焼夷弾の直撃を受けて死んだが、いまわの際に俊夫に<千九百六十三年五月二十六日午前零時、研究室へ行くこと>という言葉を遺した。そして約束の時…

 井上ひさし『十二人の手紙』中公文庫

この短編集は、性別も年齢も職業も生活もまったく異なる十二人の人間の周囲でやりとりされた手紙によって構成されている。手紙以外にもいわゆる役所に出す届けなどの公式文書も入っているが、文章はすべて「書かれたもの」で構成されている。最後のエピロー…

 笠井潔『バイバイ、エンジェル』創元推理文庫

舞台がフランスで、ちょっとなじみのないフランス語の人名が登場したり、のっけから哲学の議論が登場したりと、とっつきの悪いことおびただしいが、謎解き部分は正統派の本格である。「首の切られた死体」の解釈にもひと工夫されており、探偵役の矢吹駆(カ…

 高橋克彦『広重殺人事件』講談社文庫

愛妻冴子の自殺のショックを押して、浮世絵学者の津田良平は安藤広重の死にまつわる新説を出す。新説は注目され、津田の学者としての評判も高まるかと思われた矢先、冴子が自殺した同じ崖から津田自身も身を投げた。死の間際に津田が遺した言葉を手がかりに…