矢崎存美『クリスマスのぶたぶた』徳間書店

ぶたぶたシリーズ第4弾。今度はクリスマスにサンタの姿のぶたぶたが街を歩く。
さすがに4作目ともなると「いつものパターン」という感じにもなってくるのだが、それでも読んでいるうちにいつの間にかほんわかとした気分になってしまうのが不思議だ。
その理由の一つは、読者の視線がいつのまにか登場人物と同化してしまうことにあるのだろう。登場人物はぶたぶたを見て驚き、おっかなびっくり話しかけ、話しているうちに心が和む。そして読者もいつの間にか登場人物と同じような視点に立って、目の前にぶたぶたがいて会話をしているかのような気分になる。
さらにそこから「もしかしたらこの辺にもぶたぶたがいるんじゃないか」という気分にさせてくれる。もしも街角で出くわしたら、一度はびっくりすると思うけど、それでもきっと受け入れることができるんじゃないだろうか、思わず話しかけてしまうんじゃないだろうか。あれこれと想像をめぐらして、まるでこれから街に出ればぶたぶたに出会えるような気になってくる。
「癒し系」という言葉でくくってしまうのは何だかありきたりに思えてしまうが、読み終わると明日から楽しい気分で過ごせそうな気になる。前3作もデュアル文庫で入手しやすくなったので、そちらもぜひ。



(2005.11.4追記:この書評を書いてからはや数年、徳間デュアル文庫版も入手しにくくなってしまった。しかしその後もぶたぶたシリーズの続編が出ているのは嬉しい限り。)