小泉喜美子『女は帯も謎もとく』トクマノベルス

続いて1982年刊のこの作品。ミステリマニアの新橋芸者・まり勇が、持ち前の好奇心からさまざまな事件に首を突っ込む連作短編集。
魚河岸・築地本願寺歌舞伎座新橋演舞場といった、作者のホームグラウンドである築地の風物、芸者の世界、そして歌舞伎や日本舞踊といった古典芸能などなど、華やかな世界が展開する。肝心の推理の方はちょっと小粒であるのは否めないが、作者の知識と趣味が存分に反映された華麗な雰囲気を堪能できる。
ベストとしてはあえて一作だけ、「さらば、愛しきゲイシャよ」を挙げる。この作品の最後のオチが最高である。作者のユーモアのセンスの良さが存分に味わえる。ちゃんと「伏線」も張ってある。…え?「読んでもどこがオチで何が面白いのかよく分からない」? それをいちいち説明するのは野暮ってものです。