柄刀一『ОZの迷宮』カッパ・ノベルス(ISBN:4334075231)

説明調のやや硬い文章で状況がつかみづらく、特に会話文のぎこちなさが気になったこともあって、物語にすんなりと入っていけなかったのが残念。短編集としての趣向も、思わずニヤリとはするが文章の硬さでやや破壊力を減じてしまったようにも思う。ただ、人知を超えた不可解な状況を演出するのは最近の推理作家の中では随一である。そして、不可能犯罪の状況が現実離れすればするほど、ネックでもある硬い文章がピタリと雰囲気にはまってくるのが面白い。読者をしらけさせずにSFめいた不可解な状況を描くことができるのは柄刀ぐらいではないか。