旭堂南湖さんの東京公演、「第二回 幻の南湖」に行ってきた。一日遅れでレポート。

MYSCON4で南湖さんの上方講談を聞いて、今度は寄席で聞きたいと思っていた。ちょうど東京公演があるという話を聞き、締め切りギリギリにネット予約*1
台風一過の暑い真っ昼間、両国駅に降りて会場のお江戸両国亭へ。南湖さんが後で枕のネタに使っていた通りにまんま「ビルの一階の部屋」に高座がしつらえてある。客席は100人程度とこじんまりしているが、やはり後で南湖さんが枕の中でいうには、かえってこれぐらいの狭さの方がやりやすいとのこと。その客席がほぼ埋まるほどの大盛況。
ぐるっと客席を見渡すとやはり年齢層は高め。芦辺拓さんやシンポ教授がいる。他にもMYSCONの時に見かけたような気がする方も何人かいたが、ご挨拶ができたのは小林文庫オーナーのみ。回りの雑談に耳を傾けてみると、「ミステリの濃い話」というよりは「ミステリの仕事の話」が聞こえてきてびっくり。

さていよいよ羽織に身を包んだ南湖さんが登場。台風や大阪舞台芸術新人賞の話を枕にし、しっかり笑わせてもらったところで一本目は「古典講談・太閤記より長短槍試合」。江戸講談と違い大音声を張り上げたりオーバーな振りを使ったりせず、どちらかと言えば「おとなしく語る」上方講談なのだが、きっちり笑わせてくれる。やはり、本職は違う。
続けて南湖さんオリジナルの「新作講談・誕生日」。今度は打って変わってお涙頂戴の人情噺。自分のことをふっと思い出し、思わずぐっと来る。いやはや、うまいですな。
そしてトリは初代快楽亭ブラック原作/芦辺拓脚色の「探偵講談・幻燈」。ミステリーでおなじみのあるものを探偵小説に先駆けて物語に取り込んだという作品とのこと。現代のスレたミステリーファンはついつい「そりゃアンフェアだ!(笑)」と言ってしまうのだが、昔の人はこれをどういう風に聞いていたのだろうか、と思いつつ楽しんだ。

中入りの後、山前譲さんとともにあれこれと対談。二人で高座に上るやいなやヱビスビールの缶を取り出して乾杯したところで一同大笑い。高座の上で飲むのは初めてだと南湖さんは言っていたが、こんなくだけた雰囲気が作れるのも小さな寄席のいい所なのかもしれない。質問コーナーや南湖グッズ大抽選会などをやって、本日はこれまで。

やはりじかに語りを聞くというのは面白い。南湖さんの探偵講談は関西での公演が中心なので、関西在住の方は顔を出してみるとよいかと。探偵講談の新作も次々登場するようだし、なにより有名なミステリ作家さんを客席で間近に見られるかもしれない(笑)。最初の目的は何であれ、足を運んで損はないでっせ。
質問コーナーでも出ていたが、ここは「犯人当て探偵講談」をやってほしいなあ。鮎川哲也「達也が嗤う」や高木彬光「妖婦の宿」のような、探偵作家クラブの犯人当て朗読会に出された作品もいろいろあるし、「安楽椅子講談師の夜」なんてのもいかがでしょ。

*1:といっても、南湖さんに直接メールを出して取り置きをお願いするという形なのだが