加納朋子『コッペリア』講談社(ISBN:406211920X)

短編でいくつかあったかもしれないが、本格的にシリアスタッチの加納作品はたぶんこれが初めてではないか。どぎつくもなく、それでいてそこはかとなく妖しい雰囲気を醸し出すところは、間違いなく今までの加納作品にはないものであり、うまい。ただ、それでもなお随所に残る「加納さんらしさ」が、物語全体の印象をちょっとあいまいなものにしているようにも思う。この作品の雰囲気は決して嫌いではないし、またこういうタッチのものを書いてほしい。それでも手放しでほめるにはもう一押し何かがほしい、という印象。曖昧な感想になってしまって申し訳ない。書評に正式にまとめるときには、もうちょっときちんと書きたいのだが(といってもいつになるのやら)。