西原理恵子『まあじゃんほうろうき』(上・下)竹書房文庫

サイバラりえぞお大先生の出世作。 ある売れないイラストレーターがひょんなことからマージャンの世界に引きずり込まれ、家が建つほどのお金を吸い上げられながら、自分がカモにできるマージャン相手を見つけるなどして、いまだに卓を囲んでいるという怒濤の大河マンガである(笑)。
誇張なんだか実話なんだか、でも間違いなく実話なんだろうな、というほどのサイバラのドツボぶりに、ギャンブルなんかまずやらない私はただア然とするばかり。連載の最初の頃から次第次第に絵のタッチが変化する(ぶっちゃけた話、うまくなる)と共に、マージャンへのハマり具合もどんどん上がっていって、さらにそれにつれて自画像がだんだん邪悪になっていくさまが、壮大なビルドゥングス・ロマンを見ているかのようであった(何を大げさな)。
いや、このマンガをいろいろな角度から論じようと思えばできないことはない。ただ、卓を囲むたびにン万円の金が飛んでいくうんぬんという話の前では、何を話しても理屈っぽくなってしまうような気がする。こんな「身銭を切るような」というか、「自分を切り売りしながら」というか、とにかく卓を囲みながら思いっきり素をさらけ出しているサイバラを、他人事として思いっきり笑い飛ばすのがまっとうな読み方だろう。いやはや。