麺通団『恐るべきさぬきうどん―麺地創造の巻 (新潮文庫)』『恐るべきさぬきうどん―麺地巡礼の巻 (新潮文庫)』新潮文庫

現在の讃岐うどんブームは、この本の元版が香川で地方出版されたのがきっかけなのはほぼ間違いないようだ。もともと香川のタウン誌に連載されていた讃岐うどん探訪記をまとめたものである。
が、その内容がただものではない。そもそも出てくるうどん屋自体がとんでもない。町から遠く離れた場所にあって看板もろくにかかっていないのは基本。客がセルフサービスでネギを裏の畑から取ってきたり、米屋なのに昼時にうどんを出すという叙述トリックをしかけていたりと、それだけで十分ネタになってしまう店の数々。ラーメン屋やそば屋でこれほど「探検しがいのある」店は全国探しても何軒あるやら。それが香川にはこんなうどん屋が何軒もある。これを「恐るべき」と言わずして何と言うべきか。
これだけでも読みがいがある上に、うどんの話そっちのけで脱線しまくりの文章がまた面白い。うどんの話抜きでも読めて笑えるというグルメガイドはまずないと思う。
読み終わると登場するうどんが食べたくなるあたり、グルメガイドの役割もちゃんと果たしている。でも本筋は「お笑い」うどん探訪記。これが世間一般のグルメガイドと同じ方式で、ただ店とうどんの味を紹介するだけの本だったならば、ここまでのうどんブームは起こらなかったと言えるかもしれない。ひとまず「うどんガイド」という頭は捨てて、お笑い本として読むべし。