室積光『ドスコイ警備保障』アーティストハウス(ISBN:4048981285)

「ネタは面白いのに、もったいない」というのが第一印象。廃業力士の警備会社という設定は面白いが、小説全体の盛り上がりや構成をうまく作れていないように思える。それゆえ、一話完結の連続ドラマの台本をそのまま合本にしたような、個々のエピソードを単純につなげただけの淡々とした物語になっている。ところどころに盛り込まれる泣かせ所も、構成のせいでかえってあざとく見えてしまう。前作『都立水商!』(小学館)は「水商売専門の公立商業高校」という設定で最後まで引っ張ってしまえたが、こちらはネタの破壊力がやや落ちた分だけ、構成のまずさが目についてしまうのが残念。設定からの小ネタの膨らまし方は好きなだけに、何とももったいない。