明石散人+佐々木幹雄『東洲斎写楽はもういない』講談社文庫(ISBN:406185481X)

黒猫荘オフでみわっち。さんよりいただいた交換本。
歴史ミステリどころか本格的な歴史研究に踏み込んでおり、高橋克彦写楽殺人事件』などに比べれば数倍歯ごたえがある。私は昔から歴史が好きなので苦にならなかったし、一次史料から徹底的に当っていくスタイルはむしろ好感が持てた。
一点気になるところと言えば、「ホームズ役」の明石散人に対し、「ワトスン役」の佐々木幹雄が手放しで誉めすぎているのがちょっと鼻につくぐらいか。これは論証の説得力をかえって下げている演出のようでもったいない気がした。
あと、「絵や名前の中に隠されたメッセージ」を強調する議論に胡散臭さを感じるようになったのは、ダイイング・メッセージものの胡散臭さに近いものを嗅ぎ取ったからだろうか、とちょっと思ったりもした。