伊坂幸太郎『重力ピエロ』新潮社(ISBN:4104596019)

ちょっとしたエピソードを使って登場人物の性格を生き生きと描き出すところにこの作者のうまさが見える。泉水と春の生い立ちの設定に最初はちょっと引いてしまったものの、そこから妙な方向に深刻にならず、同時にこの設定でないと書けない物語を作っている。そこのさじ加減が絶妙で、とても読後感のさわやかな一冊だった。乙一より前向きで、本多孝好よりカラっとしているこの文体。またも追っかけてみたい作家が一人。