坂木司『仔羊の巣』東京創元社(ISBN:4488012914)

前作に比べるとロジックの鮮やかさが上がっており、ミステリーとしての完成度は高い。ただ、いささか過剰な感情表現がだんだん気になって素直に入り込めなくなってきてしまった。同じようにテーマ性の強い作品でも、天藤真仁木悦子だったら、もっとあっさりと、それゆえに逆に心にしみる書き方をしただろうに、と思う。
表現のさじ加減をもう一工夫すれば、「ひきこもり探偵」の設定も生きるだろうし、間違いなく新しいタイプの日常の謎派作品が生まれるはず。次の一作まではきちんと読みたいと思っている。