有川浩『図書館危機』『図書館革命』角川文庫

いやあ、面白かった!
少し重いテーマを中心に据えつつ、しっかりコメディとして回している、第3作の『危機』。そして日本中を巻き込む大騒ぎを仕掛ける、本編最終作にふさわしい『革命』。久しぶりに心の底から読書を楽しめた気がする。
プロットだけ見ると突拍子も無い話だけど、中を見ていくと手を抜かずディテールをきちんと積み重ねていて、「これは本当にあり得る話なのか?」と思わせる小説は昔から私の大好物。天藤真の『大誘拐』とか山田風太郎の明治ものとか。そのお気に入りの系譜に間違いなく飛び込んだシリーズになった。
なによりも会話のテンポが非常にいい。登場人物のくだけた会話が、違和感無く読める作品って、そうそうないはず。


触れておきたい話が一つ。文庫版の巻末に、児玉清有川浩の連続対談が掲載されている。対談のラストで、「稲嶺指令のモデルは児玉さん」と言われて、おそらく素で舞い上がっている児玉さんがなんともかわいい。一方で、この対談の収録が今年の3月。入院する直前で、もしかしたら検査でガンが判明していた時期かもしれないと思うと……。