夏海公司『なれる!SE2』電撃文庫

2巻は開発vs運用という業界定番の構図を持ってきつつ、1巻に比べるとぐっと物語が広がった感じで面白くなってきた。ラノベとして面白い世界観ができあがりそう。3巻は既に手元にあるけど、この先どう持っていくのかな。トラブルシューティングの緊張感とかをうまく使って、「ER」とか「救急病棟24時」のシステム版みたいなのにすれば、ラノベらしい物語にはなるんだろうけど、それもそれで現実離れしすぎてつまらないだろうし描いてみると地味になるんだろうし。
読みながらの雑感。しんどい状況はどんな職種でもあると思うのだが、それを耐え抜くためのカギの一つは、「誰かがちゃんと見守ってくれてる」という実感なのだと思った。『ブラック企業に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』にせよこの物語にせよ、その部分が土俵際で正気を保つキーになっているところに、ふと考えさせられる。
あと、エンディングの展開について思ったことを二つほど。
(以下ネタバレ格納&念のための反転あり)
終盤で、スーパー・トラブルシューターであることが判明した梢が、それでもドキュメントの引き継ぎにこだわる理由が明かされた時に、ああ、この作者さんは、この物語を「超人ヒーローバトル」にしたくないんだなと思い、好感を持った。これをやってしまうと、IT業界というのは超人的なスーパーマンでないとやっていけない、という話になってしまうから。
そして密かに唸ったのが、この物語世界の中で、梢が背負っていた過去の「業」という、物語の定番要素の一つをうまいこと表現したなあ、ということ。これを見て、上で「ラノベとして面白い世界観ができあがりそう」と書いた次第。