【もはや新作は読めないけれど】

仁木悦子

ここ何年かはぽつぽつ復刊があったりして、途切れずに本が出ているけど、新しい読者は広がっているのだろうか。ブックオフの100円棚からもだんだん消えつつからなあ……。
私的この一冊:『粘土の犬』(講談社文庫)
実は、「もったいなくてまだ読めていない」本が何冊かある。三影潤ものの長編あたりが残っているかな。その辺を読めばまたベストは変わってくるかもしれない。

戸板康二

全集刊行バンザイ。せっかくだから、海老蔵が世間をにぎわせている隙に、成田屋つながりで売り込みませんか(笑)。そういえば、戸板康二の歌舞伎ものに「役者の隠し子」というテーマが当たり前のように出てきて気になっていないのだが、ちょっと前の海老蔵隠し子騒動のニュースに、「やはり梨園に詳しい戸板さんであったか!」と膝をたたいたものですよ。
私的この一冊:『劇場の迷子』(創元推理文庫
これは昔書いた通り、もっとも味の出ている後期の作品集をセレクト。

山田風太郎

なんだかんだで途切れずに再刊や再文庫化がされていて、そう簡単に消える気配はなさそう。忍法帖/ミステリ/歴史物という3つの間口を持っているのは強いし、なんだかんだ言っても面白い。今日も復刊されたばかりの『幻燈辻馬車』を読んで、またもうならされたところ。
私的この一冊:『妖異金瓶梅』(扶桑社文庫)
今のところまだこれ。だけど、忍法帖・ミステリ・明治物のそれぞれに、まだ読んでいない作品がたくさんあって、それによっては簡単にベストがひっくり返りそう、というのがヤマフウの恐るべき所。

小泉喜美子

ちょっと前の復刊ブームにはやや乗り遅れた感があったが、最近『弁護側の証人』が集英社文庫で復刊してびっくり。でも、この人の本領は耽美な幻想小説なのですよ! これはこれでその筋に受けそうなんだけどなあ。
私的この一冊:『血の季節』(文春文庫・出版芸術社
個人的には、クレイグ・ライスの翻訳もろもろも挙げたい。

稲見一良

これまた思い出したようにパラパラと文庫化されるんだよなあ。正直、かなり荒削りな作品だと思うが、稲見さんの本は、私が挫折しかかっていた時に勇気をくれた大切なもの。世間の風に翻弄されて物思うこの頃、ちょっと手に取ってみようかな。
私的この一冊:『セント・メリーのリボン』(光文社文庫
代表作は『ダック・コール』なんだろうけど、私はこれが一番好き。「カッコいい」ではなく「格好良い」男たち。

クレイグ・ライス

この数年でいくつか新訳が出たのが嬉しい限り。『スイート・ホーム殺人事件』も新訳が出たのにびっくり。
シカゴに行った後で新訳のうちのいくつかを読んで、「ああ、あの大通りをヘレンが車でぶっ飛ばしたのね」と光景が蘇るのもまた思い出。
私的この一冊:『素晴らしき犯罪』(ハヤカワ文庫)

何冊か手つかずがあるんだよな。そもそも、『大あたり殺人事件』&『大はずれ殺人事件』から読み返してみようかな。

泡坂妻夫

【もはや新作は読めない】のカテゴリの枠に入ってしまったのが実に残念……。
長編に何冊か積み残しがあるので、そこを攻略すべきかな。
私的この一冊:『しあわせの書』(新潮文庫
ここ数年のマジックブームの中で再刊されてましたが、これは本当に凄い本。

北森鴻

今年、この方が【新作は読めない】カテゴリに入ってしまったのが非常に残念。
コンスタントに刊行される短編集はどれも素晴らしい出来で、安心して買える作家さんの一人だったのに……
私的この一冊:『メイン・ディッシュ』(集英社文庫
連作短編集として完結してまとまっているのでこの本を挙げているが、短編のクオリティでいけば、蓮丈那智ものも冬狐堂ものもその他いくつもあるシリーズ物も、どれも捨てがたいんだよ!



さて、さすがにだいぶ長くなってきたので、残りの【新刊が気になる作家たち】編と【ミステリ以外】編は、稿を改めるとしましょうか。この部分にむちゃくちゃアップデートがあるし、ミステリ以外にマンガやらアニメやらだいぶ加わったので。