1. 菅野聡美『〈変態〉の時代』講談社現代新書
  2. 白石昌則『生協の白石さん』講談社
  3. 田中優子/石山貴美子(写真)『江戸を歩く』集英社新書ヴィジュアル版
  4. 探偵小説研究会(編著)『2006本格ミステリ・ベスト10』原書房
  5. 柳広司『吾輩はシャーロック・ホームズである』小学館
  6. 『ミステリマガジン 2006.1号』ハヤカワ書房 【特集:シャーロック・ホームズ
  7. 『NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝(2005.12-2006.1) 江戸川乱歩・山田風太郎』日本放送出版協会

1は決して現代サブカル評論ではない。「変態」という言葉は元をたどれば「変態性欲」であり、その誕生は大正時代の「変態心理学」にさかのぼる。この「変態」という言葉の社会史を追ったのが本書。実は「変態」の向こうには江戸川乱歩の陰が見え隠れをし、さらには犯罪実話と猟奇の世界、すなわち探偵小説を支えた一つの風潮が見えてくるのだ。「探偵小説の社会史」を論じる上での一つの素材となるであろう一冊。
2は実は古本で買った。白石さんの切り返しはいろんな意味でお見事。カスタマー対応のお手本としても読めるかもしれない。
3は最近気になっている「東京お江戸散策」系統の本。江戸文化研究の第一人者である著者の知識に裏打ちされた読みごたえのある散策記。少々江戸へのノスタルジーが強過ぎる嫌いがあるが、日ごろよく歩く場所に確かに「江戸」が存在していたことを教えてくれる一冊。
4は言わずもがな。ベスト30の中で読んだのは、『ニッポン硬貨の謎』と『御手洗潔シャーロック・ホームズ』だけか。5は当然私は読まないといけない作品。ややキワモノっぽい内容だがよい評判もちらほら聞くので楽しみ。6も同じ。
7はNHK教育テレビの教養番組のテキスト。江戸川乱歩のパートは大槻ケンヂが担当。自らの「乱歩体験」をメインに語っているが、そのこと自体が一つの「江戸川乱歩論」になってしまうことが興味深い。また乱歩作品にはニートや引きこもりの元祖みたいな人物が続々登場する、という指摘は面白い。一方山田風太郎のパートは鹿島茂が担当。こちらは逆に、ヤマフウを文学のコードで読み解いていくという試みが興味深い。歴史的事実という絶対的な制約の中から、むしろそれを逆手にとってとんでもない「大ウソ」をつむぎだし、さらにはそれを実在の出来事のように思わせる「虚実混合」をなしとげてしまう。これこそがヤマフウの真骨頂という指摘に大いに納得。というわけでどちらのエッセイも読みごたえがあり興味深いので、関心のある方はぜひとも読むべし。