ちょっと毛色を変えてマンガでも

都立水商! 10 (ヤングサンデーコミックス)

都立水商! 10 (ヤングサンデーコミックス)

昔からマンガにはほとんど手を付けなかった私が継続的に読んでいる数少ない作品がこれ。とうとう10巻に到達した。
もとはといえばなまもの!で紹介されていたのを見て原作を手に取ったのがきっかけだった。ヤンサンでの連載が始まって、単行本化し始めた少し後から追いかけ始めたと思う。
「水商売専門の職業高校」というネタ一発で笑わせてくれた原作だが、小ネタの面白さに対して構成で損をしている部分があり、何とももったいなあと思っていた。そこに出てきたこのマンガ版は、原作の笑いどころをきっちり押さえつつも、新キャラや新エピソードを加えて大きく話を広げていて、原作の短所をうまくカバーすることに成功している。
マンガの方は原作より多少下ネタ臭を抑えた代わりに「悩んで恋して大きくなって」の青春物語風味を加えていて、これがけっこうはまっている。水商売の仕事にまつわるエピソードから、広く「仕事」一般に対する示唆も与えられたりもする。マンガ化最大の効用は、普通に聞いたら「けっ」と言ってしまいそうな「青臭い」セリフも、このとんでもない物語世界の中で聞いてしまうとやけにすっと入ってくるところだろうか。
当分連載は続きそうなのだが少々不安もある。まず、原作にあったエピソードはだいたい使い果たしてしまったということ。次に、「ただの恋愛マンガ」*1「ただの教育論振りかざしマンガ」になってしまわないかということ。そして、原作では正直グダグダになっていた「高校野球編」をどうさばくのかということ。いずれにせよ、「水商を舞台にしなくても構わないプロット」になってしまったらその時点でアウト。そうならないことを切に願う。

*1:ここから先は、主人公・田辺をめぐる恋愛関係が物語の一つの核になるだけになおさら。実は今度出た10巻でちょっとその気配を感じている。