北村薫『詩歌の待ち伏せ(上・下)』文藝春秋(ISBN:4163586202)(ISBN:4163653600)

取り上げた詩の魅力を丁寧にすくい上げて解説するところは、幅広く文学に触れているとともに元国語教師である北村薫の面目躍如。「れ」の詩は同じく『VOW』で読んだ時にただネタとして笑ってしまったので、改めてその味わいを解説されて己の不明を恥じるばかり。
それ以上に、ちょっとしたミステリーの味わいも楽しめる。たとえば、同じフランスの詩をかたや日本で西条八十が、かたやアメリカでレイモンド・チャンドラーが引用しているというような、文学作品の間の思わぬつながりが一つの詩を介して浮かびあがるところ。また、童謡や詩の「ちょっと妙な言い回し」を突き詰めていった裏の「真相」に思わず「なるほど!」と膝を打つところ。どこか〈私〉シリーズに通じるものを感じた。