日本シリーズ第3戦:どこかで見た風景

いきなり柴原の頭の上に暴投をやらかして、さらに三連打であっさり1点を取られたとき、「ムーアよ、お前もか⋯⋯」と思った。しかし城島を三ゴロ、バルデスを三振に取って1点でしのいで、おまけにチーム初ヒットを自分で打って、上手い具合に「調子に乗れた」のだろう。
対する和田はストライクとボールがけっこうはっきりしていたようにも思うが、そのストライクをきちんといいところに決めてくるのでどうにも攻略できない。悔しいがいいピッチャーだ。というところで金本アニキがバックスクリーンに鮮やかに一発! 確かにシーズン打率は3割を切っていて虎のスタメン・控えの中では低いほうに入るが、ここぞで決めてくれる存在感はやっぱりアニキだ。
星野監督の抗議の後、二死二、三塁で代打大道との対決はいい勝負だった。今までだったらカッカしてピッチングを乱しかねないところだったが、外角に落とすボールに手を出させたムーアあっぱれ。しかし大道もよく食らいついていたと思う。あれだけガタイのいいバッターでありながら、バットを短く持って長短打両方を狙われるから本当にいやだ。勝負をかけた代打ということなら、ズレータよりも大道の方がいいというのもうなずける。
その後タイガースも絶好調の岡本をどうにも攻めあぐねていたが、こちらも吉野がよくぞ3回をピシャリと押さえた。安藤の3回は想定できたが、たまに敗戦処理で2回を投げるぐらいでもっぱらワンポイントか1回で終わりの吉野を3回まで引っ張るとは思わなかった*1。というか、ロングリリーフができるとは思わなかった。
そして10回裏。代打広澤はんがまったくいい所なしの三振であっさり一死後、アリアスが何とか四球を選び、桧山がライト前に持っていって一、三塁。矢野敬遠で満塁で、星野監督ネクストサークルに行き、小柄な藤本の肩を抱きかかえて喝を入れる——細かいところこそ違え、この試合展開はまさにあの9.15の9回裏そのままの風景。これでサヨナラにならないわけがあるか!——と思うか思わないかのうちにあの時の赤星と同じく初球をひっぱたいて外野へ! センターの村松がよく押さえたと思うが飛距離は十分、同じようなサヨナラの光景が映った。
最初の負け2つの悔しさがこれで吹っ飛ぶんだから現金なものだ。ただ、打線は相変わらず不調でダイエー投手陣に押さえ込まれていて、同点に持ち込んでも勝ち越せない。それに全員そろいもそろってポップフライばかり打ち上げている印象がある。ダイエー打線を押さえ込めるという光は見えてきたが、さて明日は?

(追記)今日は守備を誉めないと。藤本も今日はいいプレーで虎ショートの大先輩・ヨッさんに誉められていたし、8回の城島のボテボテ三ゴロを好判断で二塁に送ってアウトにした秀太もえらい。それ以上に今日はアリアス。1回の城島の三ゴロを冷静にホームに送って追加点を阻み、6回にライン際に転がった川崎の送りバントを切れないと好判断し、つかんで一塁に投げて1アウトを確実に取るなど、地味ながらいいプレーを見せていた。内野の守備がちゃんとこなせる外人は貴重だしありがたい。


観戦中、緊張と興奮で心臓の辺りが苦しくなってきた。7回表の代打大道の時よりも、5回や6回の表の方がなぜか辛かった。ふと脈拍を計ってみたら100ぐらいまで上がっている。血圧はどれぐらいまで上がっていたんだろうか。
ふと、星野監督のことを考える。シリーズに入ってから、ベンチでの表情がどこか苦しげに見えるのは気のせいだろうか。私以上に苦しさをこらえながらベンチで座っているのかと、監督の体調のことを思った。

*1:実際は「引っ張らざるを得なかった」と言ったほうが正しいんだろうな。