T・フラナガン『アデスタを吹く冷たい風』ハヤカワポケミス(ISBN:4150006466)

前評判通りの好短編集だった。短編としても決して長くない作品ばかりだと思うが、短いながらも小説世界の奥行きがあり深みを感じさせる。そしてミステリーの部分も盲点のつき方が巧みであるとともに、トリックが物語とぴったり合う形で使われ、物語の味わいとトリックのインパクトを両方とも高めている。「どひゃー!」と叫んでしまう驚天動地のトリックは使っていないと思うが、トリックのインパクトを最大限に引きだし物語の中にきっちりはめこみ、印象深いものに演出する手並みはさすが。
これぞ短編ミステリーのお手本。折に触れ何回も読み返したくなるような印象を残す一冊。よくぞ復刊してくれました。