菅浩江『鷺娘——京の闇舞——』ソノラマ文庫(ISBN:425776564X)

京都への思いやキャラの善悪図式がストレートに出てしまっていて、最近の作品のような「深み」が出ていないのが欠点か。「あけすけに言うのは野暮どすえ」というのが第一感で、せっかくの素材なのだからもう少し料理してほしかったな、と思った。しかし、ぞくりとするほどの妖艶さ、物怪の姿、身体にまとわりつくさまざまなものの感触、楊枝や紅といった小道具の使い方など、描写が巧みで場面に引き込まれる。『鬼女の都』は未読だが、本領のSF・ファンタジーの方で京都を舞台にした作品を書いてほしいもの。