7.22甲子園観戦記

 今日はかねてよりの念願であった甲子園での阪神戦観戦に行く。
 思い起こせば18年前、あの「21年ぶりの優勝・初の日本一」を見て以来の阪神ファンである私。巨人・ヤクルト・西武ファンばかりの関東で暮らしながら、その後の低迷にも歯を食いしばって耐え続けた。しかし実際に球場で阪神戦を見たのは、確か小3ぐらいの時に横浜スタジアム阪神−大洋戦を見に行った一度だけ。ましてや聖地甲子園に足を踏み入れたことは今までなかった。来年からは思うように動けなくなるし、次にこんな好調な阪神を見るのはおそらく20年後だろうから、関西に足を延ばすついでに、この日の阪神−ヤクルト戦を観戦することにした。

 最大の問題はチケットである。前売り指定席が完売なのは先刻承知。それゆえ最初から自由席狙いのつもりだったが、いったい何時ごろに並べば確実なのかが見当もつかない。7/22は平日だからそこまでひどい混雑はないだろうが、さりとて試合開始直前に行っても売り切れているのは確実。何時ごろから並んでいればよいかの情報がなかったので少々困った。
 結局、泊まっていた大阪市内のホテルの朝食サービス時間が8時半までということで、朝食を食べたらさっさとホテルを出て甲子園に向かうことにする。8時15分ぐらいにホテルを出て、今日乗る夜行バスの乗り場を確認しつつ近くのロッカーに余分な荷物を詰め込み、甲子園までの往復切符を買って阪神電車に乗り込む。
 甲子園駅に着いたのは9時前。当日券売り場に行くと既に100人ほどの列ができている。それでもこれなら余裕で入場券を手に入れられるだろう。とりあえず列の最後尾に並んで腰を下ろす。
 実はこのときちょっと勘違いをしていた。というのは、当日券販売は窓口が開く午前10時から開始で、球場開門とは別だと思っていた。9時に甲子園に来たのも、「窓口が開く一時間前にいれば確実にチケットは手に入る」と思ったからだった。ところが実際は球場開門と同時に当日券が発売されるということのようで、10時になっても窓口が開く気配もなく、動くに動けず待ち続けることになる。一時間並んでさっさとチケットを取って試合開始までは神戸でも観光しようというつもりだったので、敷物や昼食、応援グッズの類いをまったく用意しないままで並んでしまい困った。もっとも早く並んでおくに越したことはないわけだし、買い出しは途中で列の後ろの人に荷物の見張りを頼んで済ませることができたし、ちょうど道路の高架下の位置で並ぶことになったので日陰で涼しく楽に並べたのだが、さすがに5時間以上座りっぱなしはきつかった。

 最終的には予定が早まって2時半に開門*1。順当にチケットを手に入れ、一塁側アルプス席へ。中段の通路そばの席を確保する。スタンドから客の入りを眺めていた印象では、3時ぐらいに来てもどこかしらに席は確保できたと思われる。それでも最終的には、一塁側アルプス、レフトスタンド自由席、そして三塁側アルプス自由席のすべてが埋まった。
 スタンドは老若男女取り混ぜて座っている。親子連れやいかにもなおっさんは当然多く、若い女性連れもそこそこいたが、驚いたのはおばちゃんが集団で観戦に来ていたこと。東京ドームや神宮球場では、おばちゃんが五六人固まって観戦しているという光景は見られないと思う。甲子園はおばちゃんたちの観光スポットなのだろうか。いやはやすごい。
 グラウンドではタイガースの選手が練習中。遠目に伊良部や井川や下柳やウィリアムスやアリアスや桧山が見える。帽子をかぶらずに練習していたムーアは背番号なしでも一発で分かった。
 試合開始まではさらに3時間以上あったにもかかわらず、タイガースそしてスワローズの練習風景を飽きず眺めているうちに時間は過ぎていく。いい天気だがほどよく雲がかかって日差しもきつくなく、浜風が心地よい。スタメン発表、そして試合前の表彰が終わって、いよいよ試合開始!

 応援団の指揮がうまくできていて、応援歌やコールの選択がちゃんと伝達されている。球場をぐるっと一周する黄色いメガホンが一斉に叩かれ、かっとばせコールをするさまは壮観。グラウンドの上ではどう聞こえるんだろうか。そんな真っ黄色のスタンドをよーく見てみると、レフトスタンドの一角に黄色くないエリアがあって、よく見るとスワローズの応援団。スワローズの攻撃中には一生懸命応援はしているはずだが、タイガースファンのざわめきにかき消されてよく聞こえない。まさに四面楚歌でちょっとかわいそうにもなる。
 応援で一番面白かったのが、5回に矢野の二塁打で4点目を取って、スワローズ先発佐藤秀を降板させたとき。タイガースファンが一斉に陰気な声で「さ〜よな〜ら、さ〜よな〜ら、佐藤〜」のコール。その上「蛍の光」を歌って追い討ちをかけ、直後にうって変わって「六甲おろし」を明るく歌う。球場いっぱいの五万人の観客にあれをやられたら降板したピッチャーは当分立ち直れないんじゃないかと、敵ながらかわいそうになってしまった。でもしっかりコールも歌もやったけど(笑)。
 あとはやっぱりラッキーセブンのロケット風船! ライトスタンドだけでなく、球場全体で一斉にロケット風船が上がる。色とりどりのロケット風船が夜空に飛び上がる、360度大パノラマの迫力と美しさはテレビの画面越しでは絶対分からない。来てよかった。

 この日の試合は、今岡の一発*2にアリアスのタイムリーなど取るべき点はきっちり取ったものの、山本−五十嵐亮−石井の必死のリレーもあって*3、要所でもう一本が出ないままやや拙攻気味の14残塁。タイガース先発伊良部は、先頭バッターを出すなど不安定さを残しながらも、要所はきっちり三振で締め零封だったが、守護神ウィリアムスがピリっとせず点を取られる。それゆえスカッと快勝とまではいかなかったが*4、それでもやっぱり勝ちは勝ち。最後の鈴木健の一ゴロを見届けてバンザイ。
 伊良部のヒーローインタビューを聞いた後、五万人で「六甲おろし」を熱唱。いやー、何と気分がいいことか! その後先発メンバーのコールを一巡させるところまでお付き合いして、球場を出る。

 予想通りというか言うまでもないというか、駅に向かう人で球場周辺は大混雑。とりあえず人が流れているのでそれに逆らわず進む。後ろの方でメガホンをたたいて騒いでいるのを耳にしつつ、夜行バスに間に合うかどうか心配しながら何とか駅へ。感心したのが、一つは駅の切符売り場で誰も切符を買っていなかった=全員ちゃんと事前に帰りの切符を買っていた/カードを用意していたこと。そしてもう一つは、数万人が押し寄せているにもかかわらず、改札での入場制限をせずに電車の客をさばいていた阪神電車の駅員と列車ダイヤ。これは特筆すべきことだろう。
 うまい具合に梅田までノンストップの臨時特急に乗ることができ、バス発車時刻の15分前に梅田に到着。余韻もそのままにバスに乗り込んで東京へと向かった。

 とにかく楽しかった。メガホンを叩きまくって手首が痛い。頭の中をまだ選手の応援歌がぐるぐる回っている。やっぱり甲子園独特の雰囲気はすごいや。

*1:海の日で祝日だった前日の試合は、どうやら朝の8時半に開門したらしい

*2:実はこの時のホームランはインコースのとんでもないクソボールを打った通称「変態モナムラン」だったらしい。しかし球場ではまったく分からなかった。うれしいような残念なような。

*3:「さ〜よな〜ら、さ〜よな〜ら〜」に逆に奮起したのだろうか。

*4:勝ってても負けてても最後まで気が抜けないというのも、タイガース戦の「醍醐味」だと思うのは私だけか?