笹沢左保『霧に溶ける』光文社文庫(ISBN:4334729495)

トリックを惜しげもなくつぎ込んで、というより惜しげもなくトリックをつぎ込んで初めて成立する趣向がすごい。ただのトリック乱発ではなく、トリック同士の組みあわせ方が実に巧妙だし、「何が何でもミスコンで優勝したいと欲している女性たち」という設定がきれいに趣向を生かしている。これだけトリックトリックしていると物語が無機的になるのがお約束であるが、最後に明かされるタイトルの意味も合わせ、独特のムードを演出しているあたりもうまい。本格好きなら間違いなく読んでみる価値あり。