莫迦をやるなら真剣にやるべし

  1. M・エイブラハムズ『イグ・ノーベル賞』阪急コミュニケーションズ
  2. M・エイブラハムズ『もっと!イグ・ノーベル賞』講談社ランダムハウス
  3. 宮武外骨『滑稽漫画館』河出文庫
  4. 宮武外骨『面白半分』河出文庫
  5. 宮武外骨『明治奇聞』河出文庫

厳密には2はちょっと前に買って読んだものだがせっかくなのでまとめて紹介。先日ドクター中松が受賞して話題となったイグ・ノーベル賞の偉大なる受賞者の面々を紹介したのが1、2の2冊。「世間をいかに笑わせ、いかに考えさせたか」を基準に選出されるこの賞。一部風刺をこめた授賞もあるが、多くは「鶏は見た目の美しさで人間を選ぶということの実証」「片方の鼻が詰まっていると脳の働きが良くなることを証明した理論」「兼六園銅像がハトに人気のない理由の科学的考察」など、ちゃんとした学術雑誌などに業績として整理されている「笑える」研究ぞろい。
ただ、輝かしい業績の数々を見ていくと、確かに内容こそ笑えるが、中で展開されている実証は真摯な科学的態度の元で行われている。たとえ「寒い所で濡れた下着を着けた時の人間の体温調節機能を観察した研究」であっても、その真剣さゆえに読み終わると「なるほど」と感心してしまうのだ。こうした研究に対して最大限の敬意とちょっぴりのユーモアを払って授賞されるイグ・ノーベル賞は、ネタとして片づけてしまうにはもったいない。
それに、イグ・ノーベル賞の15年近い歴史の中で、日本人の授賞はドクター中松を含めて10回にのぼり、しかも2002年から4年連続で受賞者を輩出しているのだ!
3〜5は、これまたお馬鹿ジャーナリズムを語るならば外せない宮武外骨の製作をまとめたもの。外骨がどんな人か、そしてどんなものを世の中に送り出していたかについては、赤瀬川原平『外骨という人がいた!』ちくま文庫)を参照。これ、明治期の大衆風俗や流行語が描かれているのも面白い。