強くしてくれるんだったらオーナーなんか誰だっていいのさ

村上ファンド阪神電鉄株の買い占めに入り、さあタイガースがどうなるか存亡の危機かという話が出ているのはご承知の通り。
阪神電鉄という企業の今後、という話であれば大いに心配であるが、阪神タイガースという球団の今後、という話であれば、私はさほど心配していない。
いまやタイガースは阪神電鉄企業価値を高めているポイントであり、阪神電鉄を乗っ取ったからといってタイガースをダメにしてしまっては、まさに産湯とともに赤子を流すようなもの。変にタイガースを売却したり、あるいはフロントに介入してまた暗黒時代に戻すようなことをすれば、株価は半減、企業の資産価値も激減。仮にも投資のプロが、そんなアホなことはしないだろう。

むしろ私は、シーズンオフのたびに身売りの噂が出ていた頃を思い出し、隔世の感を覚えてしまう。よくよく考えてみれば、年俸が上がった人気選手をあっさり放出するなんてことは日常茶飯事だったように、電鉄本社のシブチン役員はタイガースを金食い虫としかみていない節がある。星野前監督が補強のために思い切って金を使った時も、本社の役員の一部では批判が出たと言うまことしやかな話もあったような。とすると、「これだけ立て続けに優勝されると年俸は上がる一方でかなわんな。井川をポスティングさせたとしてもまだ足りんわ。そんなんやったら、高値で売れる時に売ったれ」という話が取締役会で出てもおかしくはない……。

とすると、「タイガース上場」という案も、単純に切り捨てられない話になる。バファローズの消滅や、ホークスの危機や、身売りにおびえるライオンズが示すように、親会社べったりという球団経営の現状は時に球団の存亡にかかわる。株式会社化することで親会社から独立した資金供給源を確保するとともに、「所有と経営の分離」ができれば、オーナーが変わっても球団は存続できる体制が作れるかもしれない……。

実際にこれをやろうとすれば、野球協約の壁とかプロ野球の産業構造の特性とか「スポーツの商業化」への批判とかで簡単にはうまくいかないのは承知している。しかし、ファンの単純な心情としては、心から応援できるチームを作ってくれる限りにおいては、誰がどんな形で経営しようがかまわないのだ。シーズンが終わると「来年はサントリータイガース」という話が出てきたり、不可解な無償トレードなんてのが起こったり、シーズンでの活躍が正当に評価されない契約更改が続出したり、ということがなければ、オーナーなんか誰でもいいよ。