えらいこと新刊購入報告を溜め込んでいたので、年忘れで一斉公開。2ヶ月分のくせにあり得ないほど多いので、ちょっとジャンルを分けて報告。既に読んだ本については語りたいこともあるけど、書名を打ち込んでいたらそれで力尽きてしまったので、タイミングが合えば後ほど追記を。

歴史上、最も経済効果をもたらした書物は?

きっかけは、デニーズに入ったらたまたま映画「けいおん!」フェアをやっていたこと。ホントに「けいおん!」のタイアップの範囲は広いなあ、こういう一般向けの業界にまでタイアップが広がるというのは、よっぽど「効果が確実に見込める」ということなんだろうなあと思い、ふと考えたのがタイトルの問い。
歴史上、最も経済効果をもたらした書物は何だろう?


経済効果というのは、もちろん本自体の直接の売り上げだけでなく、アニメ化・ドラマ化・映画化・舞台化・ゲーム化、関連グッズやサントラ、「聖地巡礼」的な観光資源化など、周辺的に生まれた市場もすべて含む。
もっとも、「産業が生まれ金が動いた」という点で言えば、『聖書』か『コーラン』か『共産党宣言』で決まりだと思うので、一応文芸書・娯楽書に限定。
いろいろ列挙してみると……。

  • 「全世界で聖書の次に売れている書物」とよく言われる、シャーロック・ホームズもの。その真偽はともかく、洋の東西を問わず読まれている本というのは確かに他に思いつかない。関連商品も多いし、メディアミックスも盛んにされているが、市場規模としてはどうなんだろう。
  • 小説だと、「赤毛のアン」なんかは、メディアミックスもされているし「聖地巡礼」もあるけど、そこまで市場規模は大きくないか。
  • 無視できないのが『三国志演義)』。極東のごく一部でしか流行っていないだろうけど、千数百年の間、京劇になり講談になり、関帝廟や武侯祠に参拝客を集め続けたわけで、累積効果はバカにならんのでは?
  • 欧米だと、ギリシャ神話やアーサー王伝説みたいなものよりは、やはりシェイクスピアか。全世界でずっと上演されているし、ときおり映像化もされているし、出身地は観光地化しているし。特に「経済効果の大きかったこの一冊」に絞ると何になるんだろう。
  • 「市場規模」という点でいえば、ディズニーのキャラになった作品の方が大きい気もする。ミッキーマウスは小説由来ではないから除くけど、『くまのプーさん』とか『不思議の国のアリス』とか。
  • もちろんマンガも忘れてはいけない。世界で読まれている『ドラえもん』や『ドラゴンボール』か、今なお連載が続き映像化も盛んな『名探偵コナン』や『ONE PIECE』か、アメコミ系の『スーパーマン』か『バットマン』か、意外と『ピーナッツ』(スヌーピー)か。
  • もしかしたら、『けいおん!』の経済効果はこの辺の作品をあっさり超えてしまっているとか?「日経エンタテイメント」の記事では、『けいおん!』市場は150億円規模らしいけど……。


ギネスブックあたりに既に載っているのだろうか。どなたかご存知の方、他に思いつく方、いますか?

WiLL (マンスリーウィル) 増刊 すぎやまこういち ワンダーランド 2011年 12月号 [雑誌]

たまたま本屋の店頭で見かけて手に取った一冊。「『WiLL』の増刊?」ということでちょっといぶかしみながら手にしたが、中身は非常に密度の濃い対談やインタビュー。ドラクエ好きならば絶対買うべき。
ドラクエのあのゲームミュージックに関するエピソードは今までもいくつか聞いたことはあるが、本人の生い立ちや作曲法やエピソードやドラクエに関する、すぎやまこういちの言葉をこれだけ集めたのは貴重。


堀井雄二中村光一ドラクエの「専属オケ」ともいうべき都響の皆さん、コメントを読めば文句無しのドラクエファンであることが一目瞭然の淡路恵子といった面々との対談に加え、ご本人の語る生い立ちと盛りだくさん。すぎやんご本人の言葉からもドラクエに対する思い入れが感じられ、楽しそうに語っているのが伝わってくる。その中でも、やはりその中で実際のBGMに言及されると、頭の中にメロディが流れて、「おおっ、分かる分かる!」と何だか嬉しくなってくる。
特に、都響の矢部さんが語っていた、「自分の葬式の時には、モーツァルトクラリネット協奏曲の第2楽章を流してほしいと常々言っていたけど、最近はもう一つ、DQ8の「神秘なる塔」(←塔で流れるBGM)が加わった」という言葉にものすごく同意。あれは聞くと涙が出そうになる一曲。

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ううむ、Wiiを買うか。故障中のPS2の替えを中古で買ってくるか。それとも最近出たらしいCD-BOXを買うか。

  1. W・アイザックソン(井口耕二訳)『スティーブ・ジョブズ(I)(II)講談社
  2. 青木朋(画)・上季一郎(作)『幇間探偵しゃろく』(1)(2)小学館ビッグコミックス
  3. あさのますみひだまりゼリー』角川文庫
  4. 鮎川哲也謎解きの醍醐味光文社文庫
  5. 上野千鶴子古市憲寿上野先生、勝手に死なれちゃ困ります光文社新書
  6. カノウ(漫画)『マンガで読む「分かりやすい表現」の技術講談社ブルーバックス
  7. 新谷かおるクリスティ・ハイテンション(7)MFコミックス
  8. 瀧本哲史『武器としての決断思考星海社新書
  9. 野田隆『出張ついでのローカル線メディアファクトリー新書
  10. M・ルイス(中山宥訳)『マネー・ボール』RHブックス・プラス
  11. 若林計志『プロフェッショナルを演じる仕事術PHPビジネス新書

1のジョブス評伝は、今の上司(筋金入りのマカー)が読んでいて、マカーの端くれたる私も買わねばと思って読んでいる。いろいろと興味深い。7は完結かと思って残念に思っていたが、今度は成長したクリスティが主人公の後続シリーズが始まるのか!

  1. 有栖川有栖有栖川有栖の鉄道ミステリー旅光文社文庫
  2. 太田忠司もっとミステリなふたり 誰が疑問符を付けたか?幻冬舎文庫
  3. 小倉広『任せる技術―わかっているようでわかっていないチームリーダーのきほん日本経済新聞出版社
  4. 佳多山大地謎解き名作ミステリ講座講談社
  5. 加納朋子少年少女飛行倶楽部』文春文庫
  6. 北村薫鷺と雪』文春文庫
  7. 戸板康二丸本歌舞伎講談社文芸文庫
  8. 汀こるもの空を飛ぶための三つの動機 THANATOS講談社ノベルス
  9. 山科けいすけ『SENGOKU(上)/(下)新潮文庫
  10. すべてわかる仮想化大全2012日経BP

今月は文庫で買い込んだなあ。ハードカバー版を持っている本も多いけど。
1はアリスの鉄道エッセイ。すべてのきっかけが『時刻表2万キロ』というところに大いに共感。2のシリーズ、私は大好きなのだが、あまり話題に上がらないような気がするのはなぜだろう。ギャップ萌え炸裂(by解説の西澤保彦さん)のキャラもさることながら、けったいなシチュエーションを安楽椅子探偵でロジカルに解き明かすという、ミステリとしてクオリティの高いシリーズなのだが……。
5はハードカバーを買わないままでいた一冊。6は言わずと知れた直木賞受賞作。ベッキーさんシリーズ三作をちゃんと読み直すべきか。
9は知る人ぞ知る戦国ギャグ四コママンガなのだが、よもやの新潮文庫で再刊というのは、戦国マンガ(リアルもギャグも)の盛り上がりに乗ってなのだろうか……。

ところで4は、はてな上でのASINデータとの連携がきちんと取れていなくてリンクを貼れないもの。最近も別の本で同じような事象があったが、こういうのってどこかに報告した方がいいんだろうか。<追記>4のASINデータとの連携が直っていたので修正。

ちょっとだけ時空をさかのぼってログを。

  1. 地獄のミサワカッコカワイイ宣言! 1ジャンプコミックス
  2. 地獄のミサワカッコカワイイ宣言! 2ジャンプコミックス
  3. 茂木大輔拍手のルール』中公文庫
  4. 山本博文ほか『こんなに変わった歴史教科書新潮文庫

つい1と2を買ってしまったのは、ニコ動でも見られるアニメ版に大爆笑したから。マンガの方もあのウザさが満開で十分笑えるが、ここに声優さんの演技が加わると笑いがさらに倍になるんだよなー。
作曲家と作品と名盤の紹介から入るような多くのクラシックガイド本に対して、3の茂木さんのエッセイは、クラシック鑑賞というものの敷居を下げてくれるエッセイ。「半門外漢」である私が言うのも何だが、クラシック鑑賞の入門として特にお薦めしたい一冊。

結城浩『数学ガール/乱択アルゴリズム (数学ガールシリーズ 4)』ソフトバンククリエイティブ

シリーズ最新刊、とはいえ刊行されてからだいぶ経っているが、ふと読み直してみたくなったので再読。
せっかくなので、別のところに昔に書いた『数学ガール (数学ガールシリーズ 1)』(シリーズ第1巻)の評を、はてなに転載

On the "Mathematical" Side

確率、期待値、二項分布、行列、一次変換……高校時代には一応授業で習っているもろもろの事柄が、クイックソート乱択アルゴリズムといった現在のコンピュータ数学につながっているのか、と改めて感心した。
特に行列式。最初に高校の数学で習ったときは、行列の積とか逆行列の計算に苦しみつつ「何でこんな面倒な物を考えるんだ?」と思ったものだった。一次変換を習ってなんとなく使いどころの一つが分かった、という程度の理解だったが、なるほどこういう風に拡張できるのか……と。

On the "Girls" Side

この物語に出てくる女の子たちはベタベタな「萌え要素」の固まりである。だって、いささか下衆な言い方を許してもらうならば、「黒髪銀縁眼鏡のクール系お姉様」に「ショートカットでややドジっ子属性の元気系後輩」に「ポニーテールで語尾に『にゃあ』を付ける妹系幼なじみ」ときて、みんなが何かしら主人公に思いを寄せているという「ハーレム展開」。さらに最新刊には「プログラムに非常に強いけど無口無表情でストレートに物を言う長門有希系少女」とくるのだから。
だが、話を読んでいく中では、そういうベタベタの萌えをあまり感じずに、数学の世界に入っていく。やはり「ラノベ」ではなく「数学書」。
おそらくそれは、登場人物が(そして作者の結城さんも)数学に対して非常に真摯な態度で向き合っているからだろう。「萌えで理解する数学」的な本と一線を画しているのは、決して萌えが数学より前に出てくることが無いという、この「真摯さ」なのだろうな、と思う。
キャラについてもう一つ思ったのは、これだけ真正面から数学に取り組む物語の中では、生半可なキャラ立ちの登場人物では何の「彩り」も「アクセント」も付けられず、「教科書や参考書にでてくるような、ただの説明役でしかないキャラ」で終わってしまうだろうな、ということ。ハードな数学の世界に負けること無く、登場人物が語り出し動き出すためには、むしろこれぐらいベタなキャラでいいのかな、とも考えた。
そうなると気になるのが、少しずつ出ているマンガ版「数学ガール」。マンガでは数式を並べるわけにはいかないから、メインであるところの数学的要素はいくらか背景に回さないといけない。そうすると、絵でビジュアライズされることも相まって、このベタベタな「萌え要素」が前に出てくるため、かなり印象が変わってしまう。クラシックや百人一首と違って、これは料理が実に難しいよな……と思うが、どうなんだろう。